第3回「スマホでIoTネットワーク会議」を開催しました

12月18日(水)、第3回「スマホでIoTネットワーク会議」を開催いたしました。

「スマホでIoTネットワーク会議」は、IoT活用・導入に積極的な企業メンバーで、経営・現場における課題や工夫について意見交換・ディスカッションする会議です。

本会議のディスカッション概要(ミーティングエッセンス)を公開いたしますので、各社様の今後の展開にお役立ていただければ幸いです。

 

第3「スマホでIoTネットワーク会議」ミーティングエッセンス
―デジタルトランスフォーメーションのヒント―

実施日:2019年12月18日(水曜日) 15:00~17:00
場所 :八王子市新産業開発・交流センター新産業センター「開発・交流センター」
JR八王子駅ビル(CELEO 北館 9F)
座長 :武州工業株式会社 代表取締役 林 英夫
副座長:株式会社イチカワ 専務取締役 市川 敦士
参加者:19名

 

【座長挨拶】武州工業株式会社 代表取締役 林 英夫士
本会議はIoTを製造業にどうやって取り込んでいこうかという視点でスタートしている。しかし往々にしてIoTが目的化して、何のためにやっているかわからなくなっているのではないかということも多い。
デジタルトランスフォーメーションはデジタルを使うことが目的ではなく、ビジネスをデジタルに変革することが目的である。

 

【講演】
1:「100年つづく企業を実現するための、中小企業のクラウド活用」
つづく株式会社  代表取締役  井領 明広

当社は、ITというテクノロジーを使って、100年続く会社を当たり前にしたいという思い設立した会社である。ITの啓蒙や普及を血肉のある事例を重視して実践している。
IT導入はなぜ失敗事例が多いのか。
大事なのは導入前と導入後の活動である。

IT化による大胆な業務改善報道は大企業の話ばかりかというと、実はそうではない時代が来ている。中小企業はゼロからのスタートで動きが速く、むしろ新しいテクノロジーを導入し易いと考えている。

ITシステムは買えば仕事がうまくいくというものではない。それは素の設定だけでは何も動かないからである。今の課題は何か、導入前にここから始まらないといけない。導入後にこける場合も多く、導入後使おうとしない、トレーニンができてないなど事例には暇ない。

本日の事例も支援期間1年のうち、設定等は1ヶ月で終了しており、残り11カ月が事業構造の理解とあるべき姿を定めるのに費やしている。豆腐屋も立派な製造業である。地域ではスーパーの出店と商品仕入れ価格のCD要求で廃業が相次いでいた。

当該商店は、スーパーから給食向け卸に軸足を移した。生産管理は電話、FAXとポストイットという状況で、毎朝集計に1~2時間を費やしていた。納品書発行専用のシステムだけは活用していた。「仕事を楽にしてくれ」という声から支援が始まった。要件整理から受注プロセスに的を絞り、仕事を分解して最適なシステム導入を実施。ネットでチェック、タブレットレジで注文を自動処理し、月50時間かかっていたものが12時間にまで圧縮された。生まれた時間を使い、経営者は新たなサービスによる顧客開拓に乗り出した。

クリエイティブな仕事に時間を使うことこそがIT導入の狙いである。ベンダーの言われるままでなく、使う人が自身の心をマネジメントしないとだめである。最近、100年企業の廃業率が上がってきている。
中小企業が本来やりたいことに集中できるようにテクノロジーを活用する。人手不足を人手で補わない仕組みづくりを普及するビジネスをさらに発展させていきたい。

 

2:「中小企業が推進するSDGs」
株式会社大川印刷  代表取締役社長 大川 哲郎

SDGsの取り組みは余裕があるからやっているのではなく、余裕がないからこそ地域や社会に必要とされる取組を行うことによって新たなビジネスを創発させようという思いでやっており、中小企業こそ活用できると考えている。

当社は、社会的印刷会社を使命として事業を続けている企業で、創業は1881年、様々な歴史的な書物等に関わってきた。私が、SDGsやCSRにのめり込む理由は、ある出来事で落ち込んでいる時、人種差別の残る米国南部に行き黒人との交流を深める中で、自分にできることがまだあると気づかされたからである。

SDGsはまさに自分が取り組むべき課題のメニューブックである。企業としての受け止め方としては、例えば誰一人とりのこさないとあるが、自分さえよけければよいを無くすと捉えて行っている。また貧困については、我が国においては心の貧困も加えて考えるべきと捉えている。大事なのは想像力である。

社内取り込みでは、SDGsをコンパスとしてとらえている。勉強会で理解を深め、これまでの取組とのマッピング(紐づけ)を行い、ターゲットを定める。中核課題を特定し、全社員で検討するといろいろ足りないものが出てくる。ワークショップ形式でSDGs経営計画策定し、SDGs報告会を開催している。

SDGs活動を通した従業員の成長もうれしい。例えばあるチームリーダーは、働く女性としての経験を活かし、子供たちへSDGsを上手に教えている。

取り組みやすいSDGsの事例としてバナナペーパーの名刺がある。バナナペーパーの普及は、現地で女性の就労支援となることからザンビアのお母さんの収入を助け、その収入で児童労働が減少し、学校に通えるようになる。学校に通うと学校給食でバランスの良い食事ができ、子供が健康になるというストーリーが見えてくる。女性ならではの想像力である。

大事なことは、他人事から自分事にする、手段の目的化に気を付ける、競争ではなくパートナーシップを重視することである。業界、地域など様々なパートナーシップがある。1社1社できる世界平和への貢献がそこにある。

 

【ディスカッション】出席者全員

  • 実際、SDGs取組後、社内アンケートで意識変化を見たが、もともとCSRに取り組んでたので違和感なく浸透している。SDGsに取り組んでからこの2年で活動レベルは変わった。
  • SDGsはすべての業界とつながりがあるから地域の課題解決に貢献できると考えている。ことづくりが先行して後からものづくりがついてきているのが今ではないか。
  • 2016年からの3年で5000万ぐらいは新規顧客獲得している。全体として売上横ばいだが、数字だけで評価できない。SDGs取組について大企業からの問い合わせがきっかけで、新たな仕事につながるなど取引がないところからの紹介も増えている。オープンイノベーションもSDGsをフックに増えている。
  • 一方見せかけのSDGsに失望する若者の意見も聞こえており、人のため、社会のためにやるという視点が欠落しているケースもある。SDGs推進とCSRの部分も並行して進めないと片手落ちになる。CSRがまずちゃんとできていることが必要である。
  • 中小企業へのIT支援は最初から最後まで継続的に面倒見るということでやっている。従って中小企業側も費用を投資として行える環境作りが必要である。もちろん地域の公的支援機関とは100%連携しながら、継続的な支援ができように民民で契約している。
  • IT導入だけでは終わりにしないというのが自分の流儀である。最初の1年はIT導入でやるが、 導入後はとことん自分のスキルをお客様に渡していく。お客様が使えるレベルをちゃんと理解してバトンを渡していく。
  • 中小企業が自走できる支援が必要であるが、ベンダー側は事業として成立が難しい。解決できるビジネスモデルを模索している。しかし、まだ出現していないことに社会的課題がある。
  • 税理士にクラウドを使いたいと相談する中小企業は多いが、ITの相談場所がないのが現実である。税理士の仲間とも活動を行っているが、専門家がIT設計者として入り込むことが必要だと考えている。スタートは間違いなく自社理解からである。それからが相談であり、いきなりベンダーに相談するのはお勧めできない。
  • 会計システムを内製している場合など新たなシステム採用については、社内抵抗勢力が小さくない。基本はスモールサクセス。難易度順でいうと、財務管理等がレベル1、受注管理・備品管理等がレベル2、チャット等情報共有がレベル3である。簡単なものから着手していくという順番が大事である。

 

 

【まとめ】株式会社イチカワ 専務取締役 市川 敦士

今日はIoT/IT等テクノロジーやSDGsを活用する企業側の取り組み姿勢について活発な意見交換ができたと思う。
いずれの場合も導入する目的やその本質を十分消化することが重要で、それに関わる活動を通して、新規顧客開拓や人財育成に大いに役立つことの事例を知ることができた。

 

レポート:首都圏産業活性化協会コーディネーター 佐井行雄