第2回「スマホでIoTネットワーク会議」を開催しました

10月30日(水)、第2回「スマホでIoTネットワーク会議」を開催いたしました。

「スマホでIoTネットワーク会議」は、IoT活用・導入に積極的な企業メンバーで、経営・現場における課題や工夫について意見交換・ディスカッションする会議です。

本会議のディスカッション概要(ミーティングエッセンス)を公開いたしますので、各社様の今後の展開にお役立ていただければ幸いです。

 

第2「スマホでIoTネットワーク会議」ミーティングエッセンス
―デジタルトランスフォーメーションのヒント―

実施日:2019年10月30日(水曜日) 15:00~17:00
場所 :八王子市新産業開発・交流センター新産業センター「開発・交流センター」
JR八王子駅ビル(CELEO 北館 9F)
座長 :武州工業株式会社 代表取締役 林 英夫
副座長:株式会社イチカワ 専務取締役 市川 敦士
参加者:13名

 

【座長挨拶】株式会社イチカワ 専務取締役 市川 敦士
第1回会議では、ものづくり現場のデジタル化の難しさについて経営面、技術面、人材面など多面的に話し合った。今回は、AIが取り込める環境が整いつつあるなか、中小企業として生産現場にデジタル化を導入する狙いや人材確保などについて議論していきたい。

 

【講演】
1:「生産現場のデジタル化を支援 ~稼働監視/予防保全ツールのご紹介~」
株式会社FAプロダクツ Smart Factory事業部長 谷口真一

当社は40名ほどの新しい会社で製造業のデジタル化を支援するツールやシステムを提供している。
スマートファクトリーとは何か、当社ではデータに基づいて自律化制御され、適化された工場と定義している。

工場自身が自律的に最適状態を保つイメージである。
その実現のためには段階的に進める必要があり、STEP1:まずはデータを収集、しかし取りっぱなしが多いのが実態。
STEP2:手動分析でいいので問題をあぶりだし改善し、効果について定量的に評価する。
STEP3:費用対効果を踏まえ成功パターンを社内で展開する。
この段階で自働化、PDCAサイクルが実行され、AIも試験導入される。
STEP4:自律化、AIが本格的に導入。

STEP2までをいかに早くするかが重要であるが、中小企業ではなかなか進んでいない。

デジタル化が進まない理由として
1)効果が計算できない
2)要件定義があいまいで見積が定まらない
3)PJ成功できる人材の不足
4)現場に相手にしてもらえない の4つが挙げられる。

これを打開する鍵はスモールスタートである。
すぐに効果が出せるところで成果を出し、そこから拡張していくことが重要である。

生産稼働、保守管理は費用対効果を出し易く、一方で品質管理、在庫管理は効果の確認に時間を要し、デジタル化のハードルが高い場合が多い。
スモールスタートを支援するツールとして信号横取りセンサとパネルコンピュータで構成されるスタータキットを用意している。
プログラムは分からいないが、配線は分かるという現場技術者の特性に合わせたルールである。

さらに拡張用ベーシックパッケージも提供しており、このシステムを活用して段取り時間の大幅改善を実現し、多額の効果を出した企業もある。

IoT/AIテクノロジーの応用が最も期待されるのが、予知保全である。
従来は名人芸でやっていた領域で、昔からFFT解析と熟練技術者によるノウハウに依存しそのまま自働化ができない領域である。

当社オリジナルのAIと、振動の取りこぼしの少ない6軸センサ(xyz振動+ジャイロ)を組み合わせ、正常状態の学習をさせる。
そこから異常の予兆を検出するものです。

以上当スマートファクトリー化を加速、実現するための製品技術を紹介した。

株式会社FAプロダクツ様 講演資料

 

2:「品質コスト削減による超高効率化社会の実現 ~製造業が抱える課題~」
株式会社エイシング 代表取締役CEO 出澤 純一

エッジAIつまりクラウドではなく端末装置でのAIを実現する独自の新しいアルゴリズムを生み出す力が当社の特徴である。
多くの大手企業にエッジAIアルゴリズムDBT(Deep Binary Tree)を提供し、生産性と品質という二律背反を両立させるのが当社の価値提供ということになる。

当社の技術が良くわかる巻取機の制御事例を紹介する。
通常は巻取り開始時に最適制御が安定するまでに10秒程度かかるため、この間の製品は不良品となり多額の損失となっていた。
当社のアルゴリズムを制御コントローラーに組み込むことで安定時間が1/10に改善された。

しかし本当のすごさは、当社の技術者が関与したのはアルゴリズムを組み込むときだけで、あとは企業の生産技術者が使いこなしたことにある。
当社のDBTは、汎用性が大きいこと、リアルタイム学習ができるなど今までのAIにない画期的な特徴を備えている。

機械制御分野では、時間的に状態が変化するためリアルタイムでの学習ができないとだめであるが、通常のAIにはこれができない。
これを世界で初めて実現したのが当社のエッジAI DBTである。

はじめは種のようなものしかないが追加学習を行いながら、その時その時の最適な制御条件を見つけ出し、成長していく。小規模なCPUにも組み込みができるため安価なラズベリーパイのような小型コンピュータ上でも動作できる。

DBTのもう一つの特徴は百万分の1秒オーダーの高速処理が可能なことである。
その特徴を活かして、路面状況やタイヤ状況などの動的状態を即座に検知して、ハンドル操作の最適化制御を行うことができる。
同じ原理で、フォークリフトやAGVの走行性、安定性向上などに適用されている。

専門家向けには倒立振子の実験をよく紹介している。
学習していく過程を倒立振子の動きや振動状況などで直接見ることができるからです。

当社のエッジAI DBTは入力数100以下の、高速制御が必要な機械制御領域で特徴を発揮することができる。
一方、一般的な深層学習によるAIは、画像や音声などの多変量処理、複雑系の処理が得意である。

当社はDBTに限らず、機械制御に特化した新しいアルゴリズムのAI技術の開発、実用化を今後も進めていく。

株式会社エイシング様 講演資料

 

 

【ディスカッション】出席者全員

  • 実際の現場ではAIの活用が、画像処理による品質検査に応用等で広がっている。が、機械制御側ではこれからである。AIのスターターツールも充実しつつあり、学生レベルでも使える環境はそろいつつある。
  • pythonなど新しい言語が中心となっており、言語の世代間ギャップが技術者不足の要因の一つになっており、人財育成が課題になっている。
  • 実際の生産現場では、自社製品としてはデータ活用、AI化などが進んでいるが、現場の生産性向上など内向きのところへの導入となると手が回らないが現実である。
  • お金をかけないでIoT、AIを導入できないか中小企業では課題である。大手企業では自由に研究をさせて人財育成をしているところもある。
  • しかし実態は、大手でもAI開発人財はいない。新しいアルゴリズムを開発できる人材は限られており、日本では現状500人もいないといわれている。
  • AIを使う人材については、各社力を入れている。大事なのは現場を知っている人がAIを使えるようになることが重要だと気付きはじめ、ようやく世の中が動き始めた。
  • 現場を熟知した人、例えばラダーは知っているがデータ化やIoT化、ラズベリーパイを動かすことにはハードルがある、という人財が使えるツールが必要である。
  • 利用する人材は基本的なAI知見が分かればよく、概略のメカニズムは理解して必要なハードやメモリ量などが理解できればよい。
  • データ解析技術は、データを見る目がないと現場でのAIといってもギャップがあるのでないか。欧州では、データサイエンスがメインでAIはツールであるという位置づけになっている。
  • 少ない入力だと人の感と従来のデータ分析で対応できるが、数十の多変量になるとAI解析環境が必要となる。
  • 首都圏産業活性化協会でもIT人財育成を重視している。AIの使い方やどういう仕組みが必要かを理解しているデータサイエンティスト人材の育成を行っている。
  • 人が取れないから、承継できる人がいないからデジタル化するでは、次の人を育てるのが難しくなる。ディジタル化パッケージを購入するだけになっては人財が育たない。
  • また熟練の技を機械化するのは非常に大変で、センシングがそもそも難しい。
  • 日本の企業にはペインをペイントして認識していない現実がある。ドイツではAIツールでまさに状況を変えようとしている。熟練工が五感でやっていることをデータ化し、これが新たな価値となり中小企業のビジネスチャンスとなる可能性が生まれつつある。
  • IoT技術を普及させるスタータキットも100社以上に販売され、本格運用に発展していく事例も多くなっている。
  • 効果が実感できれば、自働化、AIと次のステップに発展していける。スモールスタートでまず体験し、食わず嫌いから卒業して発展していける。
  • 活躍の中心となる人物像としては生産現場知っている生産技術系+制御系の人がいれば最高であるが、生産技術系の人財は流動性が低いのが現実である。
  • ものづくり現場のデジタル化の成功パターンとしては、1つは強力なトップダウン、もう一つはプロジェクトリーダーの独断でこっそりPoCを成し遂げ、社長を説得する場合の2つのケースに集約される。
  • 当社はデジタル化のハードツールを軸にしているが、使いこなせる顧客に絞り込んで販売している。現場のデジタル化は現場ごとに異なっており、ビジネスを成立させるのが難しいと感じている。
  • AIについては、現状やったもん勝ちのバブル期にあり、費用対効果は問われていない。実際本当に何がどこまでできるのかが分からないことの方が多い。

 

 

 

【まとめ】株式会社イチカワ 専務取締役 市川 敦士

今日はAI応用を実践している企業に講演いただき、今後どのように中小企業で活用していけるのか、その課題について議論をしていただいた。
新しいテクノロジーを受入れる側の準備が重要であり、特にAIなど新技術を活用できる人財育成の視点やスモールスタートをスムーズにするポイントについて事例を含めて様々な視点のご意見をいただいた。
協会で推進するデジタル人材育成活動にも共通することであり、繋げていければと考える。

 

レポート:首都圏産業活性化協会コーディネーター 佐井行雄