第1回「スマホでIoTネットワーク会議」を開催しました

8月26日(月)、第1回「スマホでIoTネットワーク会議」を開催いたしました。

「スマホでIoTネットワーク会議」は、IoT活用・導入に積極的な企業メンバーで、経営・現場における課題や工夫について意見交換・ディスカッションする会議です。

本会議のディスカッション概要(ミーティングエッセンス)を公開いたしますので、各社様の今後の展開にお役立ていただければ幸いです。

 

第1回「スマホでIoTネットワーク会議」ミーティングエッセンス
―デジタルトランスフォーメーションのヒント―

実施日:2019年8月26日(月曜日) 15:00~17:00
場所 :八王子市新産業開発・交流センター新産業センター「開発・交流プラザ」
JR八王子駅ビル(CELEO 北館 9F)
座長 :武州工業株式会社 代表取締役 林 英夫
副座長:株式会社イチカワ 専務取締役 市川 敦士
参加者:13名

 

【座長挨拶】武州工業株式会社 代表取締役 林 英夫
デジタル化の様々な道具が提供されているデジタルトランスフォーメーションの時代、自社はどんな方法で、どんな事を、どのようにしたいのか、その目的に合った最適な道具を早く見つけることが大事である。
この会議では様々な視点でデジタル化を取り上げていき、多くの気づきを与えられたらと考えている。

 

【講演】
1A:「デジタルトランスフォーメーション」武州工業株式会社 代表取締役 林 英夫 
当社は早くからデジタル化に取り組み、現場作業者のためのツールである『生産性見え太君』を活用し、生産性を20%以上向上させた。
デジタル化のものづくりは、データ活用の目的、方法、項目、解析の幅をさらに大きく広げつつある。

キーワードはタイムスタンプ。
監視による生産性向上だけを強調するのではなく、中小企業が真の競争力をつけることが重要である。例えば当社ではPDCAではなく、データ活用によるDCAサイクルで、現場が自力で早く解にたどり着く活動に力を入れている。

一方で現場データをAI等により経営指標に活かす取り組みとして、(株)KOSKAと組んで現場生産性の変動を原価の変動として写像する取組を行っている。

武州工業株式会社様 講演資料

 

1B:「製造現場の実態を金額で見える化」株式会社KOSKA 代表取締役CEO 曽根 健一朗
原価の実力把握には、膨大なデータ収集、専門的分析力を必要とするが、そのための高額なシステムやコンサルを導入することはできず、結果、経営者は現時点での生の原価変動を知らないのである。
当社は、IoTやAI等テクノロジーによりこの問題を解決し、お金と時間を掛けずに現場の原価変動を把握できる原価管理手法を提案している。
注目している製品や工程に関する必要十分な原価変動情報に絞った原価分析手法とIoTデータを組合せ、製造現場の実態をリアルタイムで金額として見える化するサービスである。

武州工業との事例では、原価の把握のため新たなセンサ導入5工程、従来計測データ活用10工程を通じて人が係わる工程を中心に分析を行った。この結果、見積原価と実際原価の乖離工程(改善の積み上げで実力原価が安価な場合も含む)や検査工程におけるサイクルタイム変化の時間帯による一定の傾向等が示されるなど、データにすることによって原価改善のみならず人が係わる品質管理上の作業計画など現場のものづくり全般に関する重要な知見が得られている。

当社では、現場の作業負担がゼロであるカメラや重量センサ等を使った原価把握サービスを行っているが、得られた原価変動データの分布から改善効果の評価や異常値の発見、サイクルタイムを支配している要因分析を行う等のサービスも行っている。

株式会社KOSKA様 講演資料

 

2A:「最新のIoT製品紹介とIoTによる生産革新の実践」中央電子株式会社 営業推進部部長 中村 肇
当社は設立から60年、エレクトロニクスの発展とともに先端技術のフロンティアとしてミニコン、UNIX、ネットワーク機器の開発販売を行ってきた歴史を持っている。
IoTという言葉が世に出る20年も前から、関連機器の製造販売を行っており、現在は遠隔監視、接点監視用のLPWA等関連機器が主力となっている。
一方で、主力の山梨明野事業所において生産性向上を目的に、自らの組立方式の改善を、自社技術を活かしながら絶え間なく実践してきた。
流れ作業によるライン生産から立作業によるセル・屋台生産方式、そして2003年以降デジタル屋台生産方式へと発展させてきた。
デジタル屋台の狙いは人の記憶に頼らない生産であるが、当時はデジタル屋台用のツールはなく、すべて現場による手作りから始まった。

しかし、工場全体の生産性向上達成のためには組立工程の作業指示以外に生産に係わる一連の工程進捗をすべてデジタル化(見える化)することが必要であり、リライタブルなRFIDカードを活用した工程進捗情報の収集ができるツールの導入を行った。

複数のRFIDカードの情報処理ができるRFスマートリーダーを現場に複数配置し、カードの挿抜で工程の着工・完了の時刻情報を対象機器等の生産情報とともに記録し、このデータを積み上げながら現場の生産性改善を継続してきた。

最近蓄積データを某社AIシステムで評価したところ、データ分析として継続的改善効果が定量的に確認された。現在は次のステップとして目視による検査工程の自動化に取り組んでいるところである。

中央電子株式会社様 講演資料

 

【ディスカッション】出席者全員

  • リライタブルなRFスマートカードリーダーは、ある程度自社内でバーコードやRFIDタグ等の活用を自前開発してきた企業には非常に好評である。IoTシステムの最適な構築は、業種、企業、事業所によって状況がまちまちであり、ビジネスとしてのパッケージ化が非常に難しい。当社は機器メーカーとして単品販売を基本としている。もちろん、サンプルプログラムやAPIの公開は行っており、今はある程度自力を持っている企業を中心に提供している。
  • 板金系の企業からは工程進捗の見える化をしたいという要望がよくある。RFID等と組み合わせた原価の見える化が考えられるが、入力のための負荷は最低限にしたい。
  • バーコードやQRコードリーダーが多く導入されているが、現場では入力のための操作が負担となっている場合も少なくない。RFIDカードを置くだけなので負担を大きく軽減しているが、これでさえもリーダーの設置場所や台数によっては現場の負担が問題となることもある。
  • 経営者が納得するような明確な効果をIoT導入で得るには工程をスルーしたデジタル化が必要とするため、実現のための費用、時間、人手が膨大となり、中小企業にはなかなか手が届かない代物となる。
  • それでも現場の状況を定量化したいと考えている経営者は、問題の工程について部分的にデジタル化を導入し、PoCにとどまることなく現場の知恵を引き出し、成果を上げている。
  • IoTの導入は、生産性向上の直球勝負だけでなく、治具の延長、作業の機械化・自働化、働き方改革、危機管理など、現状は様々なところから入っていく必要がある。
  • 現場の負担やものづくりノウハウ等現場をよく熟知していない付け焼刃のIoT導入では歯が立たず、痛い目に会うことになる。・IoTで得られる現場のデータの見方は、経営者と作業者では視点が異なる。しかしデータという共通の言語があることで、お互いに議論ができ、また歩みよることもできる。
  • 経営者がデータを重視するという意識を持つことが重要である。AIで現場の改善成果がズバリ出てきて全員で喜ぶことができた。ダメな部分と同様にいい部分もデータ化して評価することが大事である。

 

【まとめ】株式会社イチカワ 市川 敦士

デジタル化の大きな効果として、同じデータで経営層と現場が会話ができるようになることがこれまでにない重要なトランスフォーメーションである。今日はデータ化するということについて様々な視点から共通の議論ができたと思う。

 

レポート:首都圏産業活性化協会コーディネーター 佐井行雄